物性物理(理論)を専攻するってどういう事

物性理論を専門とする人が考えた事について

学部の頃に勉強した事-量子力学-

物理学科に進んだからには、量子力学は避けては通れない、というより学びたい、と思うのが筋でしょう。心配しなくてもだいたい必修なので学ぶことにはなるのですが、それを待てずに自分から勉強する物理学徒は少なくないはずです。実際、僕の同年代の学生も学部1、2年の頃から量子力学の本を読んでいたりしていました。(あくまで一部の学生です。)僕自身は、学部1年の頃に読んでわかるわけないよなあ...と敬遠していたので出だしは少し遅れて学部2年の夏休みくらいから教科書を読み始めました。最初に読んだ本は小出昭一郎「量子力学1,2」です。

https://www.amazon.co.jp/量子力学%E3%80%881〉-基礎物理学選書5A-小出-昭一郎/dp/4785321326

https://www.amazon.co.jp/量子力学%E3%80%882〉-基礎物理学選書5B-小出-昭一郎/dp/4785321334/ref=pd_lpo_sbs_14_t_0?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=PAC8MKX9SZ11RR57YHFQ

しっかり量子力学を身につけようと思ったらやはりブラケット形式で学ぶべきなのですが、量子力学がどういう学問なのかを知る分にはこの本はちょうど良かったと思っています。それでも2巻は多体系の量子力学の話になっていてSlater行列式を用いたフェルミオン系の記述やHartree-Fock方程式の話などは結構難しいはずです。一応読み進めれば第2量子化まで説明されているのですが、これは別の本で勉強した方が身につくんじゃないかな、と思っています。僕自身は2巻のかなり最後の方まで一気に読み進めたのですが、今思えば全く頭に入っていなかったなあと反省するばかりです。

そんなこんなで大学2年が終わろうとする頃にこの本をだいたい読み終わって来たのでもう一度体系立てて量子力学を勉強しようと思い立ちました。

そこで、次の本にチャレンジし始めました。これが大学2年の冬です。

https://www.amazon.co.jp/Principles-QUANTUM-MECHANICS-ポール・-・M・ディラック/dp/4622025124/ref=pd_lpo_sbs_14_img_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=Z1TYE28C5VRP484EDM92

(自分へのクリスマスプレゼントだと言い聞かせて買ったことを今思い出しました。)

そう、言わずと知れたあのDiracの教科書です。(図が一切でないことで有名だとか。)難しいか、と言われればいうほど難しくないと思います。ただ、記法が若干気に食わなかったりする部分があったりして、そういう意味では読みにくい点がないとは言えません。ちなみに後半の同種粒子の統計性の話やDirac方程式、電磁場の量子化の話はもっとモダンな視点で書いた教科書を読んだ方が絶対にわかりやすいはずです。量子力学黎明期の問題意識を知るには良いと思うのですが、個人的には色々と問題がとっちらかっている印象を受けたので(理論が整理されきっていないという意味で)かなり難しく感じました。前半に限って言えばブラケット気泡の説明がひたすら続いています。ハミルトニアンという概念が登場したあたりで「ようやく物理が始まった!」と友人と喜んだことを覚えています。それまではひたすら線形代数でした。ただ、ここで線形代数の復習ができたことは自分としてはとても良かったと思っています。量子力学は極論を言ってしまえば線形代数なので、線形代数の理解が深まっていた方が量子力学にはとっつきやすいはずです。ただ、Diracの本は線形代数をかなり丁寧にやっているという意味では復習も兼ねて読めるので線形代数に相当の自信がなくても挑戦できるのではないでしょうか。

ちなみに、量子力学において線形代数のベクトルに相当するものが「状態」という概念なのですがこの概念に慣れるのに僕は結構時間がかかりました。今でも十分に理解しているかと言われれば不安になります。とりあえず、状態はその物理系の「プロフィール」とでも言っておけばよいだろう、というのが現段階の理解です。例えば誰かのプロフィールを見れば年齢がわかるし、出身地もわかる。それと同じように物理系(例えば電子)にもそういった情報が含まれていて「出身地は?」と聞くのと同じように「あなたは今どこにいる?」のように尋ねれば「x=0にいます」のように答えを返してくれる、そんなイメージです。「プロフィール」あるいはRPGゲームの「ステータス」みたいなものでしょうか。(状態は英語でstateなのでステータスと読み替えることはほとんど同義でしょう。)この状態と、従来の波動関数のつながりも丁寧にDiracは説明してくれていました。その内容も今ではなんてことなく思えるのですが、波動関数は状態を位置で展開したときの展開の係数にすぎない、という理解を得たときは感動しました。

量子力学の勉強に関してはまだまだ書きたい事があるのですが、一旦ここまでとしておきます。