物性物理(理論)を専攻するってどういう事

物性理論を専門とする人が考えた事について

そういえば「世界を変えた書物展」に行ってきたのだった

 2018年9月に上野の森美術館にて「世界を変えた書物展」というものが開催されていたことをご存知だったでしょうか?書物、と聞いてどういうジャンルを思い浮かべるかによってその人のライフワークというか一部分を知ることができそうです。ここでいう「世界を変えた書物」というのは主に工学・理学の分野で変えたという事らしいです。理学部の僕からすれば結構理学部よりだったのではないかとも思いました。(そういう展示物にばかり目が行っていただけかもしれません。) 

 どんな展示があったかというと、例えば序盤は建築に関する本が多かったです。昔の本は大きいのだなあ、と思いました。それからあんなに細かい文字(当時はラテン語で書かれた書物が多かった)を印刷するというのは、今のような印刷機がある訳でもないのでとんでもない作業だったのではないか、と内容よりも本を作る家庭に思いを馳せてしまいました。それからNewtonのプリンキピア(Philosophiae naturalis principia mathematica)もありました。これは外せないですよね。力学の源流かと思うと(こういうと先駆けとなるKeplerやGalileiに失礼かもしれないですが)なかなか感慨深いものがあって人類の偉大さと尊さみたいなものを大げさに感じてしまいます。もちろん今言ったKeplerやGalileiの本もありました。天体の運動が当時では最も大きな興味の対象だったので天体に関する書物は時代に偏りがあります。他にも電磁気学と銘打ったパートもあって、みんな大好きMaxwellの書物もありました。そう言えば昔は研究結果を本として出版していたのですね。論文を投稿するという仕組みになっていったのはいつ頃からなんでしょうか。Maxwellの本の近くにはLorentzやHertzらの名前もありました。もっと先に進むと量子力学の偉人たち(SchrödingerやHeisenbergなど)の論文も当然ありました。(この展示では論文も書物としてカウントしていました。)日本人としては長岡半太郎湯川秀樹も名を連ねていました。朝永振一郎はあったかな…、残念ながら覚えていません。しかもこの展示、重力に関するパートまで設けていてこれはなんというかEinsteinの為だけに設けられている感じは否めませんでした。その付近にRiemann幾何学の数学の書物まで展示していたのは流石というかやり過ぎというか。僕は楽しいのですが、Euclid幾何学ではない幾何学があることが重大な発見だ、と言われてピンとくる人はどれくらいいるのでしょうか。

 こうした面々が名を連ねているのを見ると最早気持ちがいいです。これを見て研究頑張ろう、とモチベーションが上がったのは確かな事。ただ一方でこれほどまでの偉業を眼前に見せつけられるとこちらの牙も折れてしまいそうです。巨人の肩に乗る前にその風貌に圧倒されてしまうイメージです。

 何はともあれ、展示自体は満足でした。僕の知っている人の名前が多く見られただけでもワクワクしますし、こうした書物が今の科学につながっていると思えば壮大なストーリーを感じます。これから僕はそのストーリーの中に入り込めるのでしょうか。一生とは言わずとも1度くらいはその流れの中に身を投じてみたいですよね、どうせなら。