物性物理(理論)を専攻するってどういう事

物性理論を専門とする人が考えた事について

学部の頃に勉強した事-電磁気学-

電磁気学には苦労した思い出ばかりあります。今だってちゃんとわかっているのか、と聞かれたら不安になるのですがそんな僕がどんな勉強したのかを書いていこうと思います。

やはり最初に電磁気に触れたのは講義でした。学部の講義自体、電磁気学は3つに分かれていました。最初の講義は歴史的な流れに沿って最後にMaxwell方程式にまとめ上げていく、という内容。2番目の講義が物質中の電磁気学の講義。3番目がこれまでの復習と電磁波の放射などを扱う講義でした。最初に聞いた講義が歴史的な流れに沿っていたので自習用の教科書はトップダウン式の教科書がいいと思い、砂川理論電磁気学を読みました。

https://www.amazon.co.jp/理論電磁気学-砂川-重信/dp/4314008547

これも最後まで読み通したわけではないのですがほとんどの部分はそれなりに読みました。ただ、集中的に読んだのは院試勉強の時なので3年から4年にかけてでした。ただ、その時まで講義以外に読んだ本がなかったわけではありません。実は学部3年の時に場の古典論いわゆる「ばこてん」を読んでいました。

https://www.amazon.co.jp/場の古典論―電気力学-特殊および一般相対性理論-ランダウ-リフシッツ理論物理学教程-エリ・ランダウ/dp/448901161X

これは砂川さんの教科書よりももっと解析力学よりに書かれています。つまり、作用がありきで書かれています。これもいい本だと思いましたがやはり難しく感じました。

なお、電磁気学を学ぶにあたって真空中の理論なのか物質中の話なのかを区別することはとても重要だと思っています。物質中の電磁気だけを取り扱った教科書をちゃんと読んだことは正直言ってありません。いずれ読みたいところです。

院試勉強の際に砂川理論電磁気学を読んだと言いましたが、その後に(自分の理解の甘さを痛感したので)以下のような本も読みました。

https://www.amazon.co.jp/Classical-Electricity-Magnetism-Second-Physics/dp/0486439240

このPanofskyの電磁気学は、どちらかというとCoulombの法則やFaradayの法則などからMaxwell方程式を組み立てていくタイプだと言えるのですが、僕が好きなのは物理的な意味やイメージをつかめるように説明してくれているという所です。特によく覚えているのが、電磁場のエネルギーの解釈について。例えば2つの電荷が与えられた時にその間にはCoulombポテンシャルによる相互作用のエネルギーがあるのですがこのエネルギーは「誰が」持っているのか?という話です。この2つの電荷に等しく分配されているのか?それとも片方の電荷だけが持っているのか?それとも場に蓄えられているのか?Panofskyの本によれば、誰が持っているのか、という説明は力学で言うところのバネのエネルギーに似ている、ということです。2つの質点が与えられてその間はバネでつながっているとします。この系が収縮したときに、バネの弾性エネルギーが蓄えられるのですが、このエネルギーはどこにあるとも言えません。2つの質点が持っていると言ってもいいですし、バネに蓄えられていると言っても良いわけです。Coulombの法則による相互作用のエネルギーも同じような解釈ができるわけです。特にバネに蓄えられているエネルギーという解釈が場に蓄えられたという解釈に対応します。こうした解釈を通して電磁場が弾性体の集合体とみなせる、ということも書いてあった気がします。

ついつい電磁場のエネルギーについて語ってしまいましたが、それくらい改めて読んでみると面白い本だということです。とは言え簡単な本ではないと思います。さりげなく統計力学の知識を持ち出してきたりもするので、ある程度物理に慣れ親しんだほうが読みやすいと思います。

今の所読んだ本はこれくらいです。先ほども書いたのですが物質中の電磁気学についてしっかり勉強したことがないので、その辺はちゃんと勉強したいです。しかし何が良い教科書なのでしょうか。唯一知っているのは、理論物理学教程の連続媒質の電磁気学という本。

https://www.amazon.co.jp/Electrodynamics-Continuous-Media-Second-Theoretical/dp/0750626348

かなり難しいらしいのですが、どうなんでしょう。いずれ挑戦してみたいです。ここまで勉強してみて思ったのが、

「綺麗なフォーマリズム」を学ぶ勉強と「各々の物理量の解釈」を学ぶ勉強のどちらも学ばなければいけないのだなと言う事です。僕自身どちらもまだ不十分なのですが、今後も上記のことに注意していきたいものです。